1.いつもなら、4月末の連休当たりが桜の真っ盛りの頃になるのだが、今年は標高1000bの富士
見でもすでに散り始め、足早に春は過ぎて行く。
「春の花は黄色のものが多いですね----」どこかのテレビの番組で、タレントが花を語っていたが、その黄色の菜の花が方々の畑を賑わしている。あちこちの道路脇、駐車場などに逞しく群生して咲くタンポポの黄も目立っている。南天寮の大きな株になったヤマブキも花をつけている。
「そうか、黄色が春の花の色かな」と思いをやる。
でも、そうばかりでもない。芝生の周りではクロッカスも咲いていたし、今はコゲイトウの紫が枯れて残ったカヤの中に列をつくって咲いているし、風になびくユキヤナギの白、赤いチューリップなども鮮やかな春の色を誇っているのだ。
春は花が富みに愛惜しい。
暖春なのではあったが、3月になって戻り寒波の日もあった。しかし、異常気象と言われるほど、全体の季節の動きは早い暖春であった。
農家では、遅れないうちにネギやジャガイモの植付けを終わらねばと、急かされたように、最良のタイミングを逃さぬよう作業している姿が目立つ。
そんなことはあっても、この春の忙しさは雰囲気が明るく好もしい。
2.仕事の都合で、諏訪市医師会のH氏と長野へ行った帰り、車を廻して更科の杏の里へ寄ったのは4月の10日だったが、すでに杏の花は散ったあとで、大木にはひとつの花もなく、小木に残った花がチラホラと見えただけだった。
その日は、ちょっと春霞のかかった恰好な晴天の日で、展望のきく見晴台には東京、名古屋からの観光客も多勢見物に来ていた。だが、杏の花にはお目にかかれず生憎だった。彼等は土産に干し杏を買ったり、苗木を購入して、それぞれ土地への愛着を楽しもうとしているようではあった。ただ、杏の花は終わっていたが、丁度例年だともう少し遅い筈の桃の開花が絶頂で、杏の里といわれるその部落のの周辺で沢山の桃の果樹園に広がるピンクの、愛らしい風景は遠来の客にも美しい印象をもたらしたに違いない。
3.新年から年度末の3月にかけて、医師会事務局の仕事も、今年が役員改選期にあたったことも重なって多忙を極めた。 会議も週に2〜3回と行われることが多く、大概は夜の会議(医師は日中は診療に専念するため)となるので、事務所もその対応に追われた。
そんなわけで風次郎が南天寮に戻るのは夜半になることが多かった。
朝、寮の庭に出て、白樺の枝に、日を追って芽の出てくる様子を眺めたり、あるいは、歩いて母校高原中学のグランドヘのぼり、八ケ岳や富士を仰ぎつつ体操するのをせめて毎日の楽しみにつづけてきた。
今年は早い春の到来とはいえ、武蔵野と比較すればやはりこの地での月遅れは変わらないから、週末国立ヘ戻って、その先行する春のようすをうかがうのは楽しみであった。
そして今、春は信州にもやってきた。
遅い富士見の春も桜の季節になれば農作業が始まる。 風次郎も10日を過ぎた頃から早春の畑に出て下ごしらえを始めた。 また、今年はつつじの株やアララギを数本移植して、冬中考えた庭のレイアウトの変更を試みた。南天寮の芝付きも3年目になった今年は、しっかりと緑を濃くしてきている。
月末からの連休には、ふたたび知人、友人の顔が見られるだろう。そしたら八ケ岳のふところに足を運ぼうか、稜線に立ってやまなみや里を見下ろそうか――
春は期待に胸が膨らみよい季節だと思う。(02.04.21)